HL7 Version 3 Standard : Clinical Document Architecture Framework Release 1.0 (以後 HL7 CDA と記す) は,HL7 メッセージで「clinical documents (診療文書)」を交換する際の状況に関する意味と診療文書構造を定義した仕様であり,一群の XML (eXtensible Markup Language) 文書による仕様書である.HL7 CDA document (文書) は,ルートとなる "levelone" の下に,"CDA Header" と呼ばれる "clinical_document_header" と "CDA Level One Body" と呼ばれる "body" から構成される要素を含む."CDA Header" は HL7 Reference Information Model (RIM) Version 0.98 から導出された仕様である.したがって,同じ参照情報モデル (RIM) を参照し HL7 メッセージ作成方法 HL7 V3 Message Development Framework (MDF) [12] に基づいてメッセージ体系が開発される.この効果として,メッセージを送る側,送られる側にとって相互に齟齬なく伝達するため,つまり通信に際し互いに背景になる状況の意味が同じになる効果が期待できる.ここで注意する点は,HL7 V3 RIM といわれる RIM の版が変化する可能性があることである.すでに ANSI 規格となっている HL7 CDA Release 1.0 は RIM Version 0.98 を採用している.今後 HL7 CDA が採用する RIM の版が変わる,あるいは HL7 CDA の版が変われば,本規格に影響する範囲に関して,本規格の改訂版を出していく予定である.
"CDA Header" には文書情報,診察時情報,医療従事者,医療サービス対象および対象者に関する情報を格納するための要素が含まれる.これによって,"CDA Header" は交換すべき文書を特定し,分類し,さらに診察時情報,医療従事者,医療サービス対象および対象者に関する情報を提供する.文書情報の中には,文書識別に利用される <id> や <document_type_cd> などの要素,文書のタイムスタンプに利用される <origination_dttm> などの要素,医療サービスを提供している 1 人以上のヘルスケア提供者の指定に利用される <provider> などの要素が提供される.医療サービス対象に関する情報として,患者 <patient> 要素がある.
"CDA Level One Body" には,医療文書が含まれる.つまり,<levelone> 内に必ず 1 つの <body> を有し,その要素として,医療文書を構成する XML の内容を格納するための構造 (CDA Body structures) とエントリー (CDA body entries) が提供される. CDA Body structures には,<section>, <paragraph> などがあり,文字データを入れることのできるエントリーには <content>, <local_markup> などの要素が提供されている.
<section> は入れ子構造を持つことができ,各種コンテナを包含するコンテナである.<section> の中に複数の <paragraph> を持つことができ,<paragraph> の中に <content>を,<content> の中に <local_markup> を持つことができる.
仕様の詳細については「Clinical Document Architecture Framework Release 1.0 」の仕様書を参照.下図に HL7 CDA が定義している CDA Header:top level 構造と CDA Level One Body 構造について示す.